はじめに
本マニュアルは、群馬大学大学院保健学研究科「がんサバイバーの化学療法に関連する末梢神経障害の包括的評価尺度The Comprehensive Assessment Scale for Chemotherapy-induced Peripheral Neuropathy in Survivors of Cancer(CAS-CIPN)」開発研究班が、がん薬物療法に伴う末梢神経障害を測定するために開発した尺度を適切に使用するために作成しました。
1. がんサバイバーの化学療法に関連する末梢神経障害の包括的評価尺度の開発
本尺度は、がんサバイバーの化学療法に関連する末梢神経障害を包括的に評価することを目的とする。
2. 方法
面接調査と文献検討に基づき、がんサバイバーの化学療法に関連する末梢神経障害の包括的評価尺度の暫定版90項目を作成した。日本国内5施設で末梢神経障害が出現する治療薬を6回以上使用している外来・短期入院のがんサバイバーを対象に自己記述式による調査を施行した。最終的に有効回答327名のデータを用いて項目分析を行った。
3. 結果
がんサバイバーの化学療法に関連する末梢神経障害の包括的評価尺度化(CAS-CIPN)は15項目の質問からなり、第1因子「負の感情を伴う生活支障への脅威」、第2因子「手の巧緻動作障害」、第3因子「治療選択/マネジメントの自信」、第4因子「手掌・足底の感覚異常」の4下位尺度から構成される。
尺度のCronbach α係数は0.826であり、また対象者の末梢神経障害が薬剤投与量の増加により変化するため再テストが不可能と考え、Spearman-Brown_formula q = 2r/(1+r)により、信頼係数を算出し,0.713であり,高い内的整合性と安定性が確認された。下位尺度のα係数もすべて0.757以上が確保された.また、CAS-CIPN得点とFACT/GOG Ntx 得点の相関係数0.714(p<0.01)であり基準関連妥当性が支持された。さらに統計学的に因子妥当性も確認された。
4. 末梢神経障害の包括的評価尺度の使用マニュアル
- 本質問票の無断掲載を禁じる。
- 本質問票の質問内容の変更を禁じる。
- 本質問票の内容はデータを集積する過程で変更する可能性もある。
- 本質問票を用いて研究を行なう場合は、事前に使用の登録が必要である。本ホームページより必要事項を入力の上、質問票をダウンロードする。
- 質問票の集計は15項目の総合得点、および第1因子(質問項目4-9),第2因子(質問項目1-3),第3因子(質問項目10-12),第4因子(質問項目13-15)毎の得点を算出できる。得点は以下の計算式により計算され、最低15点、最高60点に配点される。
第1因子得点=No.4+No.5+No.6+ No.7+No.8+No.9
第2因子得点=No.1+No.2+No.3
第3因子得点(反転項目)=12-(No.10+No.11+No.12)または点数を逆に配点する。
第4因子得点=No.13+No.14+No.15
総合得点=第1因子得点+第2因子得点+第3因子得点+第4因子得点
なお、どの因子得点が高いか比較するときには、下位尺度得点を質問項目数で割る。
- 本票を用いて研究を行う場合は、その結果(論文及び学会抄録)を神田宛に送付する。また、論文発表の際には、下記の文献を引用していただく。
Kanda, K. Fujimoto, R. Mochizuki, K.Ishida, B. Lee: Development and validation of the comprehensive
assessment scale for chemotherapy–induced peripheral neuropathy in survivors of cancer、 BMC
Cancer Open access 10.1186/s12885-019-6113-3 19(1)
5. 患者さんへの施行の際の注意
- 一般的に、質問票を使用する際には、患者の状態に注意する必要がある。
- 身体的症状が強く施行が困難、せん妄・認知症などは回答の信頼性に問題が生じる。
- 質問票の内容やそれを使用する状況によっては、患者がストレスを生じる可能性もある。
- 患者の身体的・心理的状態について充分な配慮をすることが必要である。